コントな文学『合法的な露出狂』
花粉症シーズンの季節はマスクを付けていても違和感が無いから過ごしやすい。
ワタシは夜桜を楽しみながら夜道を1人で歩いていた。
すると目の前にトレンチコートを着た中年男性が現れた。
男は笑みを浮かべて両手でトレンチコートをバッと広げて中身を見せてきた。
変質者だ、トレンチコートの下は何も着ていない。
露出狂の変態に男性器を見せつけられると思い身構えたが違った。
男は服を着ていた。
トレンチコートを閉じていたので身に付けている物は足元のスニーカーしか見えなかったが、中にTシャツとハーフのチノパンを着用していた。
どういう事?
状況を理解できずに、ワタシがキョトンとしているとトレンチコートの男に追撃された。
男は右手で自分の髪の毛を鷲掴みして、バッと取り外した。
掴んだ髪の毛はカツラだった。
カツラの下には不毛地帯の頭皮が広がっていた。
マスクを付けていたので隠れていたが、ワタシは口をあんぐりと開いて両手はパーになっていた。
驚き過ぎてかなりマヌケな姿で固まってしまった。
これは一体何が起きているの?
トレンチコートとカツラの二段階ドッキリ?
隠し撮りしていたカメラマンとドッキリ大成功のプラカードを持ったスタッフが現れるのか?
いや、違う。
トレンチコートを着た露出狂だと思わせたのはフェイクで本命はハゲ頭を見せつける事だ。
男性器じゃなくて残念な頭部という恥部を若い女に見せつけて性的興奮を得る歪んだ性癖。
加えて相手を驚かせるイタズラも楽しんでいるんだろう。
イタズラは良くないが露出狂としとは合法だ。
コートを広げてカツラを取っただけ。
暑いから上着脱いでキャップ取るのと変わらない。
完全にヤラれた。
ワタシはお仕置きも兼ねて、この男を驚かせて返り討ちにした…
*
「ワタシ、キレイ?」
数年後、ワタシはマスクを外してキレイな顔をしているか否か尋ねるという行為を夜な夜な楽しんでいた。
口が裂けた顔という恥部を見せつけるのもワタシの顔を見て驚いたリアクションを見るのも快感になってしまった。
ワタシがこんな風になってしまったのは全てあの時のトレンチコートの変態のせいだ。