『岩崎史奇のコントな文学』

 『笑い』と『人間』を書いているコント文学作家です!

『今日も世界で誰かが嘘をついている。ギタリスト編』

『今日も世界で誰かが嘘をついている。ギタリスト編』



私は大学生で、同い年の伊藤君はフリーター。


私達は同じバイト先で知り合って仲良くなった。


2人でシフトを合わせてバイト終わりにご飯に行く約束をした。 


お互いに好意がある事をお互いが分かっていた。


あとはどちらから気持ちを伝えるのか…


お付き合いするのは時間の問題だった。


そして、その時は今夜だと思っていた。


念の為、ムダ毛処理を済まして、勝負下着を身に着けて、朝まで一緒に過ごす事になっても大丈夫な準備もしてきたわ。




居酒屋で食事を済ませてカラオケに行った。


「ねぇ、伊藤君から先に歌って」


伊藤君は盛り上げる為に私が好きなバンドのアップテンポな曲を入れて歌ってくれた。


だけどこの後、全く予想していなかった展開が訪れた。


伊藤君がカラオケの間奏中にギターを弾き始めたのだ。


勿論本物のギターを持参してきた訳ではない。
エアギターだ。


伊藤君は自ら歌う曲の間奏中にエアギターでギターソロを始めたのだ。
しかも、1曲目から。


大勢でカラオケに行って、お酒も入って2時間以上経って、盛り上がってる時にバカがエアギター弾くのならまだ理解はできる。


しかし今宵は男女2人きりのカラオケで下戸の伊藤君はシラフだ。


エアギターのギターソロでノッてる伊藤君を見て私は思った。


この人、無理。


本物のギターを弾けないクセにデタラメなコードでエアギターなんて、かめはめ波を撃てないのにエアーでかめはめ波を撃つのと同じ事でしょ?
そんな恥ずかしいマネが人前でできる人間は生理的に受け付けないの。


私がドン引きした後も伊藤のギターソロは続いた。


私が歌うバラード曲の間奏中まで伊藤はエアギターをお見舞してきた。
私は愛想笑いしかできなかった。


入店から1時間が過ぎる頃には伊藤のテンションは最高潮に盛り上がり、自ら歌うX JAPANの紅の間奏中にエアーでドラムを叩き出した。


伊藤がエアーYOSHIKIに変貌した時、私は限界が来てしまった。


「あ、ゴメン。実は昨日できた彼氏から連絡来ちゃって…終電無くなる前に帰らなきゃ」



『今日も世界で誰かが嘘をついている