『岩崎史奇のコントな文学』

 『笑い』と『人間』を書いているコント文学作家です!

『今日も世界で誰かが嘘をついている。ゾンビ編』


『今日も世界で誰かが嘘をついている。ゾンビ編』


俺達が通う高校にゾンビが現れた。


逃げ遅れたクラスメイトの女子の高田さんがゾンビに噛まれてしまった。


高田さんが少しずつゾンビに変化し始める。


小学校から同じ学校に通っている親友の松永功太郎が高田さんに近付いていく。


「離れろ松永。お前までゾンビになっちまう」


「アレ、もう助からないパターンのやつだよね?
ゾンビになったら、もう人じゃないから何やっても犯罪にならないよね?」


「おい、松永、お前何言ってんだ?」


「完全にゾンビになる前にJKの乳と尻と太もも触りまくってやるぜ」


「ま、待て松永。バ、バカヤローーッ」


松永は高田さんの乳も尻も太ももも触れずに、返り討ちに合って道連れゾンビにされてしまった。


その後、出動した自衛隊の特殊部隊の手によって全てのゾンビが駆逐された。


松永も高田さんも帰らぬ人となってしまった。



後日、息子の最後がどんな様子だったのか知りたいと、松永のお母さんと小学生の弟の慎太郎が俺の家にやって来た。


松永の家は母子家庭だ。


松永が中学に上がる年に両親が離婚して以来、松永のお母さんは女手一つでパートを掛け持ちしながら2人の息子を育てていた。


「どうして功太郎がゾンビに? あの日、一体何が起こったの?」


「松永は・・・えーと・・・
クラスメイトの高田さんを助けようとして、それで松永までゾンビにされてしまって・・・」


松永のお母さんに「実はゾンビ化してる最中の高田さんの乳と尻と太ももを触ろうとしたら、逆に噛まれてゾンビになって最後死んじゃったんスよ」なんて正直に言えなかった。


「もしかして、功太郎はその高田さんって女の子の事が好きだったのかしら?」


「え?・・あ、はい、そうですね、そうでした。
高田さんの事が好きって言ってました」


松永は隣のクラスの木内さんの事が好きだった。
だけど松永のお母さん的には好きな女の子を助ける為に犠牲になった方が納得できると思った。


ついでに完全に意識を失ってゾンビ化する前に松永がゾンビの群れから、俺を逃がして助けてくれた事にしといた。


松永のお母さんも弟の慎太郎も、松永の勇姿を誇らしく感じているようだった。


「フフフッ、あの子らしいわね」


涙ながらに言う松永のお母さんに心の中で《あの子らしいわねじゃねーよ。バカ息子の事、全然分かってねーな》とツッコんだ。


親友の名誉の為なのか、お母さんや慎太郎の悲しみを和らげてあげる為なのか、自分でもよく分からなくなってきた。


だけど、俺には嘘を積み重ねてあげる事しかできなかった。


「慎太郎。お兄ちゃんみたいに大切な人を守る為に行動ができる大人になって、いつか松永の分もお母さんの事を守ってあげてくれ」



『今日も世界で誰かが嘘をついている