コントな文学『(株)100人の女王様①』
三浦将平 35歳
都内で1DKのアパートに1人暮らし。
派遣会社に登録し派遣先の工場で仕分け作業をして生計を立てている。
人生に目標がない。友人も恋人もいない。
冴えない人生を送っている冴えない男だ。
いや、冴えない豚野郎だ・・・
ある日、人生が一変した。
宝くじで6億円当たったのだ。
一生遊んで生きて暮らせる・・・
とりあえず仕事は辞めた。
次にマンションに引っ越そうとネットで賃貸情報を調べている所で俺の行動力は燃え尽きてしまった。
慌てて引っ越しするのも面倒臭い。
時間と金だけがある状態になった。
時間と金があり過ぎて何もやる気が起こらない。
ただただ時間を消費するだけの毎日になった。
元々、物欲が無く運転免許証も持っていない。
免許があれば車を買うんだろうけど免許取りに行くのも面倒だ。
一生タクシー移動も悪くない。
友人も恋人もいないから1人で旅行したり高級店で食事してお金を使うという選択肢は俺には無かった・・・
マンガ・テレビ・YouTube・Netflix鑑賞か風俗で性欲を満たす。
こんな生活が3ヶ月も続くとさすがに人としてヤバいと感じる。
マジでこのまま10年後、20年後も無気力で堕落した生活を送っているだろうと想像してゾッとした。
前置きが長くなりましたが、これは俺がしっかり生きて、ちゃんとした人生を歩んでいこうと思うようになったきっかけのお話です・・・
(株)100人の女王様に電話予約。
事前にリクエスト(おねだり)した内容は
「俺を滅茶苦茶にして下さい、女王様達」
*
とにかく圧倒的だった100人の女王様達。
20人程の女王様が白ブリーフを履いて待っていた俺の部屋にヒールを履いたまま土足で入ってきた。
部屋に入りきらない残りの女王様達がアパートを囲んだ。
「こんな狭いアパートに100人も呼ぶんじゃないわよ、この豚野郎」
室内の女王様達からお仕置きの鞭の雨が俺の体と家具、家電に降り注ぐ。
パソコンのキーボードのキーをヒールでひとつずつ踏み潰している女王様もいる。
俺も踏んで下さい、女王様。
室外の女王様達はアパートの郵便受けや部屋の扉。
エアコンの室外機や駐輪場に置いてある俺の自転車を鞭でシバいてロウソクを垂らしている。
(他の住人の物には一切危害を加えない辺りがプロの仕事)
俺の生活の全てを100人の女王様達に蹂躙されている。
蹂躙して頂いてありがとうございます女王様達。
しかし、これはもはやプレイを越えて事件だ。
こんな豚野郎の人生に素敵な事件を起こしてくれてありがとうございます、女王様達。
どうか誰も通報しませんように…
「聞いて下さい、女王様達。
僕は宝くじで6億円当てました。
今はお金と時間をもて余して不毛な日々を送っています。
そんな僕を叱って下さい、女王様達」
「誰が勝手に喋っていいって許可したんだい?」
「豚野郎のくせに浮かれてんじゃないわよ」
「ぶ、ぶひぃ~」
許可なく勝手に身の上話をした豚奴隷の私めに女王様達はお仕置きのロウソクを垂らして叱って下さった。
「ありがとうございます、女王様達」
「お前はどうしようもない変態だね」
「私達にどうしてほしいんだい?」
「これからはちゃんと生きますから・・・
顔と乳首をヒールで踏んでほしいです、女王様達…」
浮かれている気持ちを静めていただいた。
しっかり叱って頂いた。
金持ちになっても俺は豚野郎。
謙虚に生きよう。
しっかり生きよう。
ちゃんと生きよう。
目が覚めた。
きっかけをありがとうございます女王様達。
人生をかけて何がしたいか、俺に何ができるのかを探すんだ。
とりあえず・・・
引っ越しから始めようか。
もうこのアパートでは暮らせない。