『岩崎史奇のコントな文学』

 『笑い』と『人間』を書いているコント文学作家です!

コントな文学『イオン列島《呪縛》』

地元の人間からも他県の人間からも『何もない町』と認識されている田舎の町が私の地元だ。

そんな何もない我が町に映画館を備えた広大なイオンができたのだ。

そしてイオンができてから私が暮らす町は『イオン以外何もない町』になった。


家族とお買い物はイオン。
友達と遊ぶ場所はイオン。
彼氏とデートはイオン。

だってイオンしかないからね。


イオンしかない町だから担任の先生とイオンの中のユニクロで会っちゃう。

ケンカしてお互いに口をきかないクラスメイトとフードコートで会っちゃう。

彼氏とイオンシネマに行くと新しい彼女を連れた元カレと遭遇しちゃう。

そんな気まずい出来事が毎週のようにイオンで起きるのだ。



高校2年の夏、私はこの先の未来像を思い浮かべる。
このまま地元の大学に進学して地元で就職して地元の男と結婚して出産したとする。


大学生になっても友達や彼氏とイオンにお出かけ。
結婚したら週末は旦那とイオンにお出かけ。
子供ができたら週末は家族でイオンにお出かけ。


この先も地元に残るという事はイオンと共に生きて、私と未来の旦那様や生まれてくる子供に関わる全ての地元の人間がイオンで繋がっていくという事なんだろう・・・
イオンしかないから。


想像したら気持ち悪くなって少しゲロ吐いた。

ゲロ吐き終わって私は決心した。


東京に行こう!


地元(イオン)の呪縛から解放されたい一心で東京の大学に進学を決めた。





12年後…

東京の大学を卒業し、東京で就職をした。
そして東京で知り合った東京生まれの男性と結婚した。


旦那と帰省して旦那の希望で地元のイオンモールでショッピングをしていると元カレが奥さんと子供を連れて歩いていた。

お互いに目を合わせるな&話かけるなオーラを放出しながらすれ違った。


地元(イオン)に帰ってきたと実感した。


イオンの中のドトールコーヒーでお茶しながら旦那は言う。
「相変わらずイオンしかない町だよなぁ」

「そうね、イオンしかないわね」

「実は今度、転勤になるんだ」

「え?嘘?どこ?何県?」

「ちょっと田舎らしいんだけど…」

「どこなの?」

イオンの呪縛から逃れる為に東京の大学に行って東京で就職して東京の男と結婚したのだ。
イオンしかないような田舎町に引っ越す事になるのか?
結局、私はイオンの呪縛からは逃げられないのか?

「中国」

「ちゅ、ちゅ、ちゅ、中国?」

「広東省」

「か、か、か、広東省?」

まさかの海外!
でもイオンしかないような地方の田舎町よりはいっそイオンの無い外国の方が良いかもしれない。
ついに私はイオン列島の呪縛から解き放たれるのだ。

「ちなみに近くにイオンあるんだってさ」

「中国にもイオンあるんかーい!」


田舎町のイオンの下見に来た旦那が優しく微笑む。
「便利だし中国にもイオンあってよかったね」

私はイオンの呪縛からは逃げられなかった。